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介護生活を始めるときに、介護の負担を減らしたいと考えてリフォームを検討する方もいることでしょう。
しかし、リフォームには費用がかかるため、リフォームを諦めてしまう方もいらっしゃいます。
介護のためのリフォームであれば、補助金・助成金や減税制度の利用で小さい費用負担で、介護を行いやすい住宅へのリフォームが可能です。
本記事では、介護リフォームの概要と介護リフォームで利用できる補助金・助成金・減税制度について解説します。
介護リフォームとは
要介護状態である方が住み慣れた自宅で安心して暮らし、介護する方も介護が行いやすい環境にリフォームすることを「介護リフォーム」といいます。
自宅で介護を行うなら、段差の解消や手すりをつけるなど、バリアフリーな環境にしなければなりません。
車いすを使うなら、スペースや導線の確保も必要でしょう。
在宅介護に起こりやすい2つの事故(転倒・入浴)
長年住んでいた自宅でも、事故に遭うことは珍しくありません。
高齢化に伴い、自宅で事故に遭う高齢者の方は年々増加傾向にあります。
在宅介護が必要な高齢者の場合は、小さな事故が命に関わる大怪我につながる可能性も高いです。
高齢者が自宅で最も遭いやすい事故は下記の2つとなっており、事故の要因と対策を解説します。
- 転倒
- 入浴
転倒による事故
高齢者は運動機能や知覚機能が衰えてしまうため、少しの段差でも転倒する恐れがあります。
長年暮らしてきた安心できる自宅だとしても、油断は禁物です。
転倒の要因は、以下の通りとなります。
- カーペットの弛みや電気コードに引っかかる
- 滑りやすいチラシなどを踏んでしまう
- 靴などを履く際の片足立ち
- 高いところにある物をとろうとする際のつま先立ち
転倒対策は、以下の通りです。
- 床や階段に物を置かない
- できるだけ段差を作らない
- 手すりを設置
- 階段に滑り止めをつける
- 急かさない
- 後ろから声をかけない
高齢者は、足腰やバランス感覚の衰えにより、本人の思っているよりも体がついていかないことがあります。
家族の些細な言動が引き金になることもあるため、本人への声がけにも注意が必要です。
入浴による事故
最も重症化しやすい事故は、入浴中の溺水です。
入浴中の溺水は、急な温度変化によるヒートショックが主な要因となります。
ヒートショックは心臓に過度な負担をかけるため、心筋梗塞や脳卒中、失神を引き起こしかねません。
入浴中の溺水を未然に防ぐために、以下のような対策が必要です。
- 浴室や脱衣所に暖房機器を置き、あらかじめ暖めておく
- 入浴前に、浴槽のふたを開け、シャワーを使うなどして蒸気で浴室を暖める
- 41℃を超えるお湯にいきなり浸からない
- 長湯はしない
- 浴槽では急に立ち上がらない
入浴中の事故は、発見が遅れてしまえば、手遅れになってしまう可能性があります。
要介護者本人の入浴時間を、家族が把握しておくことが非常に大切です。
早めの検討がおすすめ
事故を防ぐには、危険な場所をどれだけ減らすかが重要です。
未然に事故を防止するには、危険な場所を可能な限り減らすことが重要です。
介護リフォームには時間がかかります。
要介護認定を受けて自宅介護を行う場合、介護リフォームはなるべく早く検討しましょう。
リフォームに利用できる補助金・助成金
リフォーム工事にはさまざまな補助金制度があります。
下記のように国から交付されるものや、地方公共団体から交付されるものなどさまざまです。
- 介護保険の補助金
- 市区町村からの助成金
- 減税制度
介護を受ける方の状態や世帯全体の収入によって、活用できる補助金は異なります。
介護リフォームを検討する場合は、始めに地域の役所で利用できる補助金を確認しましょう。
介護保険の補助金を利用した介護リフォーム
40歳から加入できる介護保険で、介護のためのリフォームについても負担することが可能です。
介護保険制度には介護リフォームの為の「住宅改修」の項目があります。
支給条件を満たせば20万円を上限として、費用の9割程度、最高18万円が支給される制度です。
厚生労働省によると、申請の流れは以下の通りです。
1.ケアマネジャーに相談
2.施工事業者の選択・見積もり依頼
3.市町村へ工事前に申請
4.市町村は内容を確認し、結果を教示
5.改修工事の施工→完成/施工業者へ支払
6.市町村へ 工事後 に改修費の支給申請
7.住宅改修費の支給額の決定・支給
何でも介護保険でリフォーム負担できるわけではありません。
保険適用可能なリフォームについて、ご紹介します。
手すり設置
転倒の防止や立ち座りを手助けするために階段・玄関・浴槽などに手すりを設置します。
手すりの高さや形状を吟味し、利用者が使いやすいようにしましょう。
段差の解消
円滑な移動や転倒予防のために、隣接した部屋の境目にある段差をなくします。
高齢者の怪我の多くは、住宅内での転倒による怪我です。
スロープや床のかさ上げを行うことで、段差を解消していきます。
滑り止めなど床材の取り換え
転倒を防止するために、既にある床材を滑りにくい加工を行う、または床材の変更をします。
クッションフロアへ変更し転倒後に重症化させないことや、畳をフローリングに変更し車いすを使いやすくすることも可能です。
扉の変更・取り換え
筋力の低下に伴い、扉の持ち手が回せないことや開け閉めが難しい方のために、扉を引き戸などに変えます。
持ち手そのものを変えることや、重い扉を軽いものに変更することも必要でしょう。
洋式便座等への便器の取り換え
立ち座りが不自由となった時のために、和式便器から座りやすい洋式便器に取り替えます。
車いすによる移動の制限がある場合、トイレにいきやすい位置に変えることも可能です。
上記の5項目のために必要となる工事
床材などの部材だけでなく、手すりを取り付ける際の下地工事や、トイレの位置の変更に伴う給排水設備工事なども、介護保険適用範囲となります。
市区町村からの助成金で介護リフォーム
介護保険以外にも、市区町村が介護のためのリフォーム助成金制度を設けている場合があります。
自治体独自で設けた助成金制度は、介護保険の補助金と支給条件や上限額・対象となる工事などが異なるため、注意が必要です。
介護保険では対象外の工事にも助成金が下りることもあるため、自治体が行っている助成金制度も併せて確認しましょう。
静岡市の助成金制度 – あんしん住まい助成制度
静岡市の「あんしん住まい助成制度」の対象者は、下記2つの要件全てに該当する方です。
65歳以上で、介護保険の要介護認定・要支援認定を受けている
扶養している家族が39万3千円以下の所得税
【参考】あんしん住まい助成制度-静岡市
補助基準となる額は上限100万円になり、介護保険によるリフォームとの併用ができます。
介護保険と同じく、トイレの洋式変更や段差解消などが工事内容です。
補助率などの細かい条件については、静岡県のホームページをご覧ください。
浜松市の補助金 – 高齢者住宅改造費補助金
浜松市の「高齢者住宅改造費補助金」の対象者は、下記5つの要件全てに該当する方です。
1.60歳以上であること。
2.介護保険の要支援1、2・要介護認定1〜5を受けていること。
3.市・県民税が非課税の世帯に属していること。
4.市税を完納している世帯に属していること。
5.改造する家屋に現に生活し、改造する家屋を住所地としていること。【引用】高齢者住宅改造費補助金-浜松市
補助金額の計算式は「補助金額 =(補助対象経費×補助率1/2)-他制度による補助額」です。
上記の()内は75万円が条件ですが、厚生労働大臣が定める地域では100万円を限度額に補助金が支給されます。
補助金の対象となる工事の細かい条件については、浜松市のホームページをご覧ください。
介護リフォームは減税制度も利用できる
介護のためのリフォームには、所得税や固定資産税などが減税制度の対象となる場合があります。
それぞれの税金によっては、対象となる工事・税率・他の税制優遇との併用の適否が変わるため、しっかり確認しておきましょう。
所得税
1月1日〜12月31日までの1年間に生じた個人の所得に課税されるものを所得税といいます。
投資型減税とローン型減税があり、それぞれ控除期間や控除額が違うため、自分に合った適切なものを選択しましょう。
また、改修工事の内容によっても控除の内容が変わります。
税務署への確定申告で、必要な手続きを行えば控除が受けられるため、ぜひ活用しましょう。
【参考】バリアフリー改修に関する特例措置-国土交通省
【参考】リフォームの減税制度-(一社)住宅リフォーム推進協議会
固定資産税
保有する土地や建物などの固定資産に、1月1日時点で評価し課税されるものを固定資産税といいます。
リフォームによる家屋の固定資産税の減税は、工事完了後3か月以内に市町村へ申告することが必要です。
所得税同様に要件を満たすリフォームが減税の対象となります。
【参考】リフォームの減税制度-(一社)住宅リフォーム推進協議会
まとめ
介護リフォームをする際の補助金・助成金、減税制度についてご紹介しました。
介護される側、する側どちらも生活がしやすくなる介護リフォーム。
費用が抑えられることで介護リフォームを検討し始めた方もいらっしゃるかもしれません。
要介護認定を受けて自宅介護を行う場合には危険な場所を減らし安心できる自宅で生活するためにも、上記で紹介した制度を利用し、早めに介護リフォームを検討しましょう。