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隠れ脱水とは高齢者に特に多い症状で、脱水症状になりかけています。放置すると熱中症リスクが高くなるため、気温が高くなる春夏にかけては特に注意しなければなりません。
本記事では危険な隠れ脱水の概要と高齢者が特に注意すべき理由、隠れ脱水の見分け方と予防方法を解説します。
隠れ脱水とは
隠れ脱水とは、体内の水分が1〜2%失われ、脱水症になりかけている状態となっています。体の水分が不足していますが、症状が出ていないため自分も周りも脱水症状になりかけていることに気づきません。
水分や塩分補給の対処が遅れるため、熱中症になるリスクも高まります。
脱水症とは体から体液が失われて水分が不足し、のどの渇きやだるさ、立ちくらみを伴います。
ひどい状態になると微熱や意識障害、血圧の低下を引き起こし、必要な酸素や栄養分が体に行き渡りません。血液中の水分が減ると血がドロドロの状態となり、脳梗塞や心筋梗塞など命にかかわる病気を引き起こすリスクもあります。
高齢者は隠れ脱水に注意
隠れ脱水は年齢を問わず発症しますが、特に高齢者に多い症状です。なぜ高齢者が隠れ脱水になりやすいのか、その理由を解説します。
加齢により体内の水分量が減りやすい
人体の60%は体液といわれていますが、高齢になると体液の割合が50%まで低下するといわれています。
人は食事に含まれる水分も体内に蓄積しますが、加齢によると食欲が落ちるため食事量と水分量が同時に減少するためです。
また、加齢によって体液を蓄える筋肉量が減るため、体内の水分量が減ってしまいます。
内臓の働きが低下
高齢者は若いときと比較して内臓組織の動きが低下します。
特に体内の水分量をコントロールする腎臓の動きが鈍ると、塩分の再吸収に支障が生じ、体液の塩分濃度の調節ができなくなるため、脱水症を発症するリスクがあがります。
のどの乾きに気づきにくくなる
人は体内の水分量が減るとのどが渇き、水分を補給しようとします。のどが乾いたという感受性を司る反応を「口渇中枢(こうかつちゅうすう)」と呼びますが、高齢者はこの機能が低下し、のどが乾いた感覚を感じにくいです。
そのため水分補給が遅れ、やっとのどが乾いたと自覚したときにはすでに脱水症状を発症しているケースがあります。
また、認知症を発症している場合飲み物を飲んだ時間を把握できず、長時間水分を摂らないため脱水症を発症するケースもあります。
病気や排泄障害がある
糖尿病患者は血糖値が高まると、糖を排出しようと頻尿の症状が出ます。頻尿になると当然体内の水分を過剰に排泄してしまうため、脱水症になる可能性が上がるでしょう。
そのほか糖尿病に由来しなくとも頻尿や下痢など、必要な水分を排出してしまう症状を伴う病気にかかっていると、脱水リスクが高まります。
薬を服用している
利尿作用が高い薬を服用している場合も、脱水症状を引き起こすリスクが高まります。
薬の影響で排尿頻度が高くなり、体内に必要な水分も排出するためです。
特に高齢者に多い高血圧に処方される降圧剤は利尿作用が高いものが多く、脱水症の一因となります。また、頭痛薬を常用している方も注意が必要です。
頭痛薬などを常用していると、腎機能が薬の分解に使用されます。腎臓は塩分濃度調整を司る器官のため、薬の分解によって腎臓が常に働き続けた状態だと、体液の塩分濃度調整に支障が生じやすく、脱水症状リスクが高くなります。
常用している薬がある方は脱水リスクも高いため、こまめな水分補給が必要です。
隠れ脱水と熱中症の関係
熱中症とは、体温調整ができなくなり、異常な発汗によって体内の水分量や電解質量のバランスが崩れることで発症します。
症状は脱水症と酷似しており、隠れ脱水になっている人は、そのまま熱中症にかかる可能性が高いといわれます。
隠れ脱水の人は体内の水分量が少ないため、それだけ体温が高くなりやすいためです。
水が半分ほど入ったやかんと6割ほど入ったやかんは、水が少ないやかんの方が早く沸騰します。
人体は通常6割程度が体液で構成されていますが、脱水症状を発症していると体液の割合が下がり、体温を下げる機能が働かず熱中症を発症します。
隠れ脱水は自覚症状がなく、周囲も変化に気づきにくい症状です。放置して熱中症を発症すれば命の危険もあるため、隠れ脱水を甘く見ないようにしましょう。
隠れ脱水の兆候
自覚症状がなく、周囲も気づきにくい隠れ脱水にも兆候があります。
- 皮膚がカサつく
- 肌から皮が落ちてしまう
- 口がねばつく
- 食べ物がパサついて感じる
- 唾が少なく飲み込めない
- 便秘の症状がある、またはひどくなった
- 皮膚のハリがなく、手の甲をつまんで話した際に3秒以上跡が残る
- 足のすねにむくみが出る
- 爪を押した際に白くなった部分がピンクに戻るまでに3秒以上かかる
【参考】かくれ脱水チェックシート – 対象:65 歳以上のご高齢の方
隠れ脱水の予防法
熱中症予備軍とも呼ばれる隠れ脱水は、こまめな水分補給やしっかりした食事、室温の調整で予防できます。
特に高齢の方は脱水に気づかず症状が重篤化するリスクが高いため、意識して予防策をとりましょう。
こまめな水分補給をする
隠れ脱水の予防には、こまめな水分補給が重要です。
高齢の方は口渇中枢の反応が衰えており、のどが乾いたと気付いた時点ではすでに脱水になりかけていることが多いです。
そのため、のどが乾いたかどうかではなく、意識してこまめに水分を取りましょう。
熱中症や隠れ脱水を予防するためには、ナトリウムとカリウムが含まれる飲料がおすすめです。
利尿作用の高いコーヒーやアルコールは水分排出を促してしまうため、カフェイン・アルコールが含まれた飲料は避けましょう。
1回あたりコップ1杯の飲料を1〜2時間おきに摂取する習慣をつけると、隠れ脱水を防止できます。
また、水分補給の量は一気に大量に摂取せず、1.6Lの量を1日8回程度に分けて摂取しましょう。
水分補給を水からおこなうときは、塩タブレットや梅干しを同時に摂取すると、ナトリウムとカリウムを補給できます。
食事から水分補給をする
水分補給に加えて、食事からの水分摂取も重要です。
暑い時期は若い方でも食欲が落ちますが、1日3回の食事から水分を摂取するようにしましょう。
食事に含まれる水分により、人間が1日に必要な水分量の3分の1を摂取できるためです。
高齢の方は食欲が減退する傾向にありますが、おかゆや野菜スープなど、汁物にすると食べやすくなります。
また、食物繊維やビタミンが多く含まれる野菜やフルーツを食事に取り入れると、脱水症の予防と同時に、脱水を引き起こす原因のひとつである便秘も予防できるため、積極的に取り入れてください。
部屋を適温に保つ
外気温が上がりやすい夏は、エアコンをつけて室温を調整しましょう。
水分補給は非常に大切ですが、体から余分に水分が失われない環境作りも大切なためです。
快適に過ごせる室温は22度から26度の間といわれています。環境省はエアコンの推奨設定温度を28度としていますが、冷房を28度にしても室温が自動で28度に保たれるわけではありません。(【参考】どうして「28℃」?/COOLBIZ|COOL CHOICE 未来のために、いま選ぼう。)
西日の影響などでも室温は変わるため、室温を計測しながら適温に調整しましょう。
高齢者の方は室温に関する感覚が低下し、暑いことに気づかないケースがあるため、家族の方がエアコンを積極的に調整してください。