ダブルケアとは、子どもの育児をしている人が両親の介護も同時に行うことです。
晩婚化や晩産化、少子化問題に陥っていることが原因で、現代ではダブルケアを行う人が増えています。
この記事では、ダブルケアの問題点や負担を減らす方法、ダブルケアの備え方などをご紹介します。
今後のことを考えて介護と育児のダブルケアに備えておきたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
介護と育児のダブルケアの推移
まずは、介護と育児のダブルケアを行っている人の人数や年齢、就業状況などを確認していきましょう。
ダブルケア人口の推移
2016年に内閣府が行った就業構造基本調査によると、介護と育児のダブルケア人口は約25万人いることが判明しました。女性が約17万人、男性が約8万人と、割合的には女性の方が多くダブルケアを行っています。
また、15歳以上の人口に対してダブルケアを行っている人の割合は0.2%です。
さらに、全育児者に対してダブルケアを行っている人の割合は2.5%、全介護者に対してダブルケアを行っている人の割合は4.5%となっています。
【参考】「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」| 内閣府男女共同参画局
ダブルケアを行なう者の年齢
ダブルケアを行なっている人の年齢は、平均すると男女とも40歳前後という結果でした。
育児のみ行っている人の平均年齢より4~5歳程度高く、介護のみ行っている人の平均年齢より20歳程度低くなっています。
また、30代~40代男女の8割がダブルケアを行っていることが分かりました。
これは、育児のみを行っている男女の割合と同じです。
【参考】「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」| 内閣府男女共同参画局
ダブルケアを行なう者の就業状況
ダブルケアを行っている女性の過半数は有業者で、そのうち仕事を主にしている人は約半数です。これは、育児のみをしている女性とほぼ同じ傾向となっています。
一方、ダブルケアを行っている男性の9割程度は、仕事を主にしている有業者でした。
【参考】「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」| 内閣府男女共同参画局
ダブルケアを行なう者の負担感
ダブルケアを行っている人のうち、育児を負担に感じている人は男女ともに約半数。
また、介護の方が負担に感じている人は3人に2人という調査結果が出ています。
この結果から、介護の方が負担に感じている人が多いことが分かるでしょう。
【参考】「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」| 内閣府男女共同参画局
ダブルケアの問題点
ダブルケアの問題点は、主に以下の5つです。
- 女性への負担が大きい
- 1人にかかる負担の重さ
- 孤立化
- 離職
- 介護への影響、育児への影響
では、順に見ていきましょう。
女性への負担が大きい
日本には昔から「家事や育児は女性がするべき」「介護は女性が引き受けるべき」という固定概念がありました。現代でも同様の概念を持っている人がたくさんいます。
実際、ダブルケアをしている人は女性が圧倒的に多いことが現状です。
固定概念の影響もあり、女性がダブルケアをする確率は高く、女性への負担が大きくなるといえるでしょう。
1人にかかる負担の重さ
介護や育児は慣れないことが多いうえに、兄弟や親戚などから援助を得られない場合も多く、1人に大きな負担がかかりやすいです。
そのため、今までしていた仕事を退職する必要があったり、プライベート時間が確保できなくなったりするなど、肉体面はもちろん、精神面の負担も増えてしまいます。
「ダブルケアがいつ終わるのかが分からない」「1日中介護と育児のダブルケアで休む暇もない」という状態になってしまうと、精神的に追い詰められてしまうことも珍しくありません。
孤立化
介護と育児のダブルケアは増えていくと予想されているものの、実際にダブルケアをしている人は全体的に少ないです。
また、自治体も介護・育児だけの窓口を設置していますが、ダブルケアに特化した相談窓口はほとんど設置されていません。
そのため、周囲にダブルケア経験者がいない、ダブルケア相談窓口がないといった状態になりやすく、悩みや不安を共有できずに孤立してしまいます。
誰にも相談できない状況が続くと、ますます孤立化が進み、精神的な負担が大きくなります。
場合によっては、うつ状態になったりストレスによる病気にかかったりする可能性もあるでしょう。
離職
介護と育児のダブルケアは負担が大きく、仕事との両立が難しくなります。
休むことが多くなると、会社との関係性の維持が難しく、退職せざるを得ない状況になることも。
退職すると収入が少なくなる一方で、介護と育児のダブルケアによって支出額が多くなり、金銭面の負担が大きくなります。
金銭面での負担が原因で、夫婦喧嘩に発展し、離婚してしまう恐れもあるでしょう。
介護への影響、育児への影響
介護と育児は、どちらも肉体面・精神面・金銭面に大きな負担がかかります。
そのため、ダブルケアに慣れないうちは、高確率で片方に影響が出てしまうので対策が重要です。
例えば、離婚した女性が仕事とダブルケアを両立させる場合、介護に時間をかけないために老人ホームに入居させることが多いでしょう。ただ、その場合、入居費用が毎月かかります。 入居費用を作るために仕事に力を入れると、育児にかける時間が少なくなり、子どもの成長に影響が出るかもしれません。
介護と育児のダブルケアが負担にならない方法
介護と育児のダブルケアは大きな負担がかかりますが、ポイントを押さえると負担を減らせます。
内閣府が行った就業構造基本調査によると、以下のような理由で実際にダブルケアに直面した際も業務量や労働時間を変えなくて済んだと回答しています。
ダブルケアが負担にならなかった理由 | |
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男性 |
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女性 |
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男性の場合は、約半数の人が「家族の支援が得られたために介護と育児のダブルケアが負担にならなくなった」と回答しました。
一方、女性は育児サービスを利用したことで、介護と育児のダブルケアの負担を感じなかったという理由を挙げていました。
他にも、家事代行サービスの利用や地域の支援などで、ダブルケアの負担を軽減したようです。
このように、介護と育児のダブルケアに直面した際、まずは周囲の人や支援サービスに頼って少しでもダブルケアの負担を軽減させましょう。
【参考】「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」| 内閣府男女共同参画局
介護と育児のダブルケアに備える
介護と育児のダブルケアを乗り越えるには、事前にダブルケアに備えておくことが大切です。以下の方法で、介護と育児のダブルケアに備えておきましょう。
- 地域包括支援センターに相談する
- 地域の子育て支援センターに相談する
- ダブルケアに関わるNPOのイベントに参加する
- 会社の就業規則を事前にチェックしておく
- 元気なうちに家族と話し合いを
地域包括支援センターに相談する
地域包括支援センターは、高齢者の介護や福祉などを支える総合相談窓口です。
自治体が主体となって設置しており、専門知識をもっている職員に介護に関する悩みや不安を相談できます。
介護中の親はもちろん、高齢者がまだ健康な状態でも、地域包括支援センターが利用可能です。そこでは、状態の悪化を防ぐために、日常生活の維持・改善を目指す介護予防サービスについて意見を聞けます。
普段の生活で気になることがあれば、一度地元にある地域包括支援センターに連絡してみてください。
看護の不安や悩みなどがある場合も地域包括支援センターに相談しましょう。
地域の子育て支援センターに相談する
子育て支援センターは、育児をしている家庭を支える施設。
子育てに関する悩みや不安を相談したり、施設内イベントで他の親子と交流したりできます。また、子育て支援センターから地域の保育情報の入手が可能です。
子育て支援センターの中には、定期的にダブルケアに関するセミナーや座談会を開催しているところもあります。
ダブルケアを行う前に育児に関する不安がある場合は、地域の子育て支援センターに相談しましょう。
ダブルケアに関わるNPOのイベントに参加する
ダブルケアが問題視される現代では、ダブルケアに関するNPOが増えています。
NPO法人が開催しているセミナーやイベントなどに参加することで、ダブルケアについての情報を集められるでしょう。
同じ悩みを持つ人が参加しているため、実際に役立つ情報を得やすいメリットがあります。
例えば、『NPO法人 わははネット』では、毎月『ダブルケアカフェ』を開催しており、介護・育児の座談会や地域包括支援センターを呼んで、情報提供を行っています。
最近だとオンライン対面やYouTube配信をしているNPO法人も増えているため、気軽にイベントやセミナーに参加しやすいところも魅力的です。
ダブルケアに関する情報収集をしたい場合は、ダブルケアに関わるNPO法人のイベントに参加しましょう。
会社の就業規則を事前にチェックしておく
介護と育児のダブルケアを行う際、たくさんのお金や時間を必要とします。
そのため、お金を稼ぐために仕事を継続しつつ、介護や育児に影響が出ないように時間を作らなければなりません。
会社の就業規則を事前にチェックしておくことで、ダブルケアを開始する際に、会社へ相談しやすくなります。
「どれくらい休暇が取れるのか」「給与はどの程度になるか」など、具体的な部分までしっかり確認しておきましょう。
元気なうちに家族と話し合いを
理想的なのは、両親が元気なうちに介護について家族と話し合いをすることです。
家族と事前に話しておけば、実際にダブルケアを行うときも慌てずに済みます。
介護が必要になる前に、「今後どのように生活したいか」「お金はどうするか」などを話しておくといいでしょう。
兄弟がいる際は、兄弟間でも両親の介護について話し合うことが大切です。
ただ、介護に関する内容は話しにくいものです。場合によっては、家族の関係性がこじれてしまうこともあります。
しかし、介護はいきなり始まることが多いです。
突然介護が始まり家庭内で混乱が生じないためにも、話しにくい内容ですが、家族が元気なうちに話し合いをしておきましょう。