介護保険制度
介護保険制度とは
介護保険制度とは、介護が必要な高齢者や、その家族を支えるための社会保障制度のひとつです。人生には、出産からはじまり、先天的な障害、事故や病気、高齢化による身体機能の低下や認知症など、さまざまなリスクがあります。こうしたリスクに直面したとき、社会全体でお互いに助け合い、対処する相互扶助システムが社会保障制度です。
高齢になると、身体機能の低下や脳梗塞、認知症などにより、日常生活に困難が発生し、介護が必要となる可能性が高まります。「介護疲れ」という言葉がメディアで取り上げられるように、介護は、ご本人だけでなく、それを支えるご家族にとっても大きな負担となることがあります。こうした介護に関する困難を社会全体で支える仕組みが介護保険制度です。
介護保険制度の仕組み
介護保険制度は2000年から始まった新しい制度です。40歳以上の国民が加入し、保険料を納め、介護が必要な人は1割または2割の費用負担で、様々な介護サービスを受けることができます。保険料は所得によって決まります。
介護サービスには、①居宅サービス、②地域密着型サービス、③施設サービスの3つの種類があります。
居宅サービスは、自宅にいながら受けられる介護サービスです。ホームヘルパーや、訪問看護などの「訪問サービス」、介護施設に通ってデイサービスやリハビリを受ける「通所サービス」、介護施設に短期間だけ入所するショートステイなどの「短期入所サービス」があります。
地域密着型サービスとは、介護が必要な方を可能な限り住み慣れた自宅や、地域で過ごすために創られたもので、居宅サービスの拡充や、地域の小規模な施設を活用する介護サービスです。例えば、24時間365日の自宅からの緊急コールに対応する「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や、施設への通い、宿泊、自宅への訪問を柔軟に組み合わせることができる「小規模多機能型居宅介護」、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送る「高齢者グループホーム」などがあります。
施設サービスは、特別養護老人ホームや、介護老人保健施設、各種老人ホームなどの介護施設に入所し、そこで生活をしながら必要な介護サービスを受けるものです。
介護保険制度の仕組み
介護サービスの利用にあたっては、①市町村から「要介護認定」を受け、②介護支援専門員(ケアマネージャー)が「介護サービスの利用計画」(ケアプラン)の作成をする必要があります。
①要介護認定とは、介護サービス利用者の介護の必要量を、全国一律の基準に基づき判定する仕組みで、要支援1~2、要介護1~5の7段階に分類されます。このレベルによって、入所できる施設や、介護サービスにかかる費用が異なります。
②「介護サービスの利用計画」(ケアプラン)とは、介護サービスを受ける本人とその家族が、より充実した生活を送ることができるように長期的、短期的な目標を設定し、最適な介護プランを作成するものです。心身の状態の変化に応じて、作り直すことができます。ケアプランは、ケアマネージャーに依頼し無料で作成することができます。また、本人や家族が作成することもできます。
要支援
判定区分 | イメージ | 判定基準 |
---|---|---|
1 | 杖なしで歩ける | 日常生活はほぼ自分できるが、要介護状態予防のために少しの支援が必要な状態 |
2 | 杖を突いて歩く | 要支援1よりも日常生活を行う能力が少し低下しており、少しの支援が必要であるが、要介護までは至らず、改善の可能性が高い状態 |
要介護
判定区分 | イメージ | 判定基準 |
---|---|---|
1 | 歩行器を使って歩いている | 要支援2よりも日常生活を行う能力が一部低下しており、排泄や入浴など部分的な介護が必要な状態 |
2 | たまに車椅子が必要 | 日常生活動作において、立ち上がりや歩行が自力では困難であったり、排泄、入浴などに一部または全介助が必要な状態 |
3 | 車椅子が必須 | 日常動作が著しく低下し、排泄、入浴、衣服の着脱など全面的な介助が必要な状態 |
4 | 外出が困難 | 動作能力が低下し、排泄、入浴、衣服の着脱が全面的な介助が必要で、介護なしには日常生活を営むことが困難な状態 |
5 | 寝たきり | 介護なしに日常生活を行うことがほぼ不可能で、意思の伝達も困難な状態 |
介護保険制度を取り巻く現状
- お金
- 規模
- 種別の内訳など
平成26年の厚生労働省の調査によれば、介護サービス種別の費用内訳をみると、居宅サービスが約49%、施設サービスが約35%、地域密着型サービスが約11%となっています。また、提供するサービスごとの事業者数に関しても、居宅サービスが約24万社、地域密着型サービスが約2万6千社、施設サービスが約1万2千社となっています。
介護保険の総費用は、2000年度の3.6兆円から、2016年度の10.4兆円(当初予算)へと約3倍に膨れ上がっています。また、65歳以上の介護保険加入者が支払う保険料についても、月額平均で、2000年当初の2911円から、5514円(2015~2017年度)へと増加しています。
65歳以上の被保険者数も、2000年の2165万人から、2015年には3308万人に増加(1.5倍)しています。また、要介護の認定者数についても2000年の218万人から、2015年には608万人に増加(2.8倍)しています。介護保険サービス(居宅、施設、地域密着型)の総利用者数については、2000年の149万人から、2015年には511万人へと増加(3.4倍)しています。