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「老人性うつ」は高齢になると誰もがかかる可能性のあるうつ病のことです。
老人性うつと認知症と混同されやすく、一緒に暮らす家族が正しい知識を持ち、早めの対処で重症化を防げます。
近年では新型コロナウイルス感染症予防のため、会話が減り人と接することが疎遠になりがちです。
これまで以上に老人性うつの発症の危険性が高まっているため、注意しなければなりません。
本記事では、老人性うつの概要や対処法、老人性うつと間違われやすい認知症との違いについて解説します。
「老人性うつ」とは65歳以上の高齢者がかかるうつ病のことです。
抑うつ感が強く悲観的になり、身体的な不調や記憶力の低下などの症状が現れます。
うつ病は、早期に正しく治療を行えば治る病気です。
認知症との違いをしっかり把握し適切に対処できるようにしましょう。
家族が老人性うつの疑いがある場合に見分ける、9つの症状を解説します。
うつ病の人は、憂うつになり気持ちが沈むことがあります。
うつ気分は、ふいに泣きそうになり、辛くて胸が強く締めつけられるような状態のことです。
うつ気分は、場合によっては何か月も続きます。
うつ病になると、これまで楽しめていた趣味や活動に興味を持てなくなりがちです。
何かをしようという気持ちさえ起きなくなり、他人とかかわらないようになってしまいます。
食欲の低下も、うつ病では一般的な症状のひとつです。
食欲がなくなって、一か月に 4 キロも 5 キロ も体重が減少することがあります。
一方、それとは逆に食欲が上昇することもあり、甘いものなど特定の食べものばかりほしくなる過食にも注意が必要です。
寝つきが悪くなるだけでなく、夜中に目が覚めて寝つけなくなったり、朝早く目が覚めてしまう症状です。
逆に、睡眠時間が長くなり日中も寝続けるといった過眠症状が現れることもあります。
周囲から見てもわかるほど身体の動きが鈍くなったり、口数の減少や声が小さくなるなどの症状です。
逆に、自分でもわからない焦燥感に駆られ、落ち着きなく身体を動かしたりすることもあります。
焦りや苛立ちを感じている時には、辛さを何とかしたいと焦って話し続けたりするため、表面的には元気そうに見えてしまうことが厄介です。
うつ病の方は、ほとんど身体を動かさないのに疲れたり、身体が重く感じることが多いです。
気力が低下しているとやる気が出なくなり、生活するうえで必要なことにさえ時間をかけてしまうようになります。
罪責感とは、自己肯定感が著しく下がったり、根拠なく悪いことをしたと感じることです。
無意味に自分を責めたり、過去の失敗を思い出しては悩むようになり、自身に関係ないことまで自分のせいだと思いつめるようになります。
注意が散漫になり、集中力の低下にも注意が必要です。
また決断力がなくなり、些細な問題でも考えすぎて何も決められなくなります。
うつ病になると、辛い気持ちをどうにかするために「死んだ方がまし」だと考えるようになってきます。
自殺は、気分が沈み何を行うにも億劫になっているときは実行できません。
むしろ、自殺の危険性はうつ病が軽くなったときに上がると言われます。
老人性うつは、二つの要因で発症することが多いと言われています。
環境の変化や心身の衰えが原因となることが多いです。
具体例を見てみましょう。
【具体例】
【具体例】
老人性うつとよく間違えられるのが、認知症です。
老人性うつの症状に、思考力・記憶力の低下や疲れやすさなど、認知症の症状と重なる部分があります。
老人性うつは認知症と違い、治る病気です。
適切な治療を受けさせるために、違いの見分け方を解説します。
うつ病は短期間に複数の症状が現れるため、周囲の人も発病に気付きやすいのが特徴です。
一方、認知症は比較的ゆっくりと進行し、発症に気付かない場合があります。
記憶障害は認知症にも老人性うつにもみられる症状ですが、違いは症状の現れ方です。
老人性うつの場合、突然数日前のことが思い出せなくなり、焦燥感を覚えることがあります。
軽度から徐々に重くなっていくのが、認知症です。
もの忘れは、昨日の夕飯のメニューを忘れるくらいなら普通ですが、認知症の場合は直前に食べた夕飯の事自体を忘れてしまいます。
食事をした行動自体を忘れてしまうため、不安を覚えることはありません。
うつ病の人は自責の念が強く「周囲に迷惑をかけているのではないか」と、思い込んでしまいます。
自分を卑下するあまり「死にたい」と思うようになることもあるため、自傷行為などしないよう注意が必要です。
対して、認知症の人は自責の念はありません。
うつ病の場合、自分が今までとは違うと自覚があるため、症状の悪化を気にする様子を見せるのが特徴です。
認知症は、症状が軽度であれば不安を感じることもありますが、症状が重くなるにつれ無関心になっていきます。
うつ病の人は、質問に対して長考したうえで答えられない傾向があります。
認知症の人は質問に対して検討外れな回答となることが多く見受けられ、間違いを指摘されると取り繕おうとすることが多いです。
老人性うつ | 認知症 | |
---|---|---|
症状の進行速度 | 何らかのきっかけで発症・ 短期間で激変することがある |
進行はゆっくりの場合が多い |
記憶障害(もの忘れ)の有無 | 短期記憶に支障が出る・ 自覚があり、忘れやすいと訴える |
短期記憶に支障が出る・ 自覚がなく、取り繕うことがある |
自責の念の有無 | 強い | 深く考えない |
本人の自覚の有無 | 自覚があり不安を感じている | 無関心 |
質問に対する受け答えの違い | 回答に時間がかかる | 的外れな回答となることがある |
ここからは老人性うつの予防法と、うつ病と診断された場合の治療法について見ていきましょう。
老人性うつの予防は日々の生活の中でできることがたくさんあります。4つの観点からご紹介していきますので、少しづつできるところから取り入れていきましょう。
リズミカルな運動をすることで、神経伝達物質が分泌され精神の安定や安心感などが促進されます。歩行運動や食事の際の咀嚼、意識的な呼吸などでも活性化されます。また日光を浴びることでも神経伝達物質は分泌されるので、日中に適度な運動をするとよいでしょう。
孤独感から老人性うつを発症するケースが多いようです。仕事を退職したことで、人と接する機会がすくなくなり、孤独感を感じやすくなります。日頃から地域とのつながりを持つことで、自分の居場所を確保し人との繋がりを実感することで孤独感が解消されます。
これまで解説してきたように、老人はさまざまな不安などを抱えストレスを感じやすくなります。ストレスを溜め込まないように自分にあったストレス解消法を見つけることが大切です。ストレス発散は趣味でするものと考えがちですが、会話や相談もストレスを発散に繋がりますので、気楽に話せる相手を見つけておくことも安心に繋がります。
栄養バランスの良い食事は大切です。一人暮らしの場合や、体力低下で食事を作らなくなるケースがあります。コンビニ弁当や炭水化物がメインの出来合いの食事になってしまいがちです。炭水化物以外にも必要な栄養素をバランスよくとることが健康には重要です。肉・魚・野菜・豆・海藻といった食材をバランス良く摂取することと、朝・昼・晩と3食欠かさず食べるように心がけましょう。
老人性うつには大きく分けて3つの治療法が上げられます。一般的なうつ病と変わりはないようですが、高齢者の身体的な特徴を考慮して治療を行う必要があります。それでは治療について解説していきます。
仕事を退職したや、配偶者やペットを亡くした、友人に合う機会がなくなったなど、さまざまな環境の変化があります。「孤独感」や「喪失感」を感じ、活力が低下している状態に陥りがちです。近年では新型コロナウイルス感染症により、人との関わりが疎遠になることも多い環境になっています。そんな場合は特に家族のサポートが必須です。本人には無理はさせずに休ませることやコミュニケーションを取り、心身に安心と刺激を与えるような機会を作ることが重要です。
一般的なうつ病と同じように、抗うつ剤などの使用も治療法の一つです。しかし、抗うつ剤の中には「血圧の上昇」や「頻尿」などの副作用があるものもあり、高齢者には不向きなものもあります。必ず医師に判断してもらうようにしましょう。
老人性うつは不安や孤独感によるものが多く、人と話をすることで気持ちが整理され症状が改善される場合があります。家族は本人の訴えを傾聴し話を否定しないことや、「頑張れ」などの応援もプレッシャーに感じるため控えた方が良いでしょう。具体的な接し方についてはその人の性格によっても異なるため、専門医に相談して決めるようにしましょう。
予防法・治療法でも必要なことを解説してきましたが、本人だけの取り組みではなく、家族ができること・心掛けることをご紹介します。
① なるべくいつも通りに接する
② 励ましすぎない、あせらない
③ 何か手伝えることがあればできるだけやらせて欲しいと伝える
④ 対象者がその気になった時には、なるべくゆっくり話を聞く
⑤ 原因を追及し過ぎない
⑥ 可能な範囲で、精神科や心療内科の医療機関への受診をすすめる
⑦ 重大な決定は先延ばしにする、あるいはそうするように助言する
⑧ 甘えや攻撃といった症状がある場合等、時には距離をおいて見守る環境を作る
⑨ 対象者が家族にとって大切な人であるというメッセージを伝える
⑩ 問題を一人で抱え込まずに、相談する
※厚生労働省の介護予防マニュアル(改訂版:平成24年3月)
第8章うつ予防・支援マニュアル 資料8-1高齢者のうつについてから抜粋
老人性うつは治療すれば治る病気です。認知症とは違い、うつは進行速度が早いので、気になることがあれば早めに症状を確認してみましょう。
もし、家族が老人性うつと診断された時は、本人の主張を認めることが大切です。「つらい」「体が痛い」などの主張に対して否定や反論をしてしまうと、症状が悪化する恐れがあります。耳を傾け共感してあげるよう心がけましょう。
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